公的書類の翻訳において、最も注意すべき点の一つが「誤字脱字の防止」です。
戸籍謄本や住民票などの公的書類を海外の機関に提出する場合、その翻訳が正確であることが申請の成否を左右する重要な要素となります。
本記事では、公的書類翻訳の重要性、誤字脱字が引き起こす具体的な問題、そしてそれを防ぐための具体的な対策について解説します。
誤字脱字が問題となる理由
公的書類は、申請者の身分や家族関係を証明するために使用される重要な文書です。これらの翻訳に誤りが含まれていると、以下のような問題が発生する可能性があります。
1. 申請手続きの遅延や拒否
誤字脱字がある翻訳書類は、不正確とみなされ、申請が却下されることがあります。特に名前や日付、続柄の誤りは、他の書類との整合性が取れなくなる原因となり、再提出が求められるケースも少なくありません。
2. 本人確認が困難になる
名前のスペルが間違っている場合、特にローマ字表記がパスポートと一致しない場合、外国の公的機関はその書類を無効と見なす可能性があります。
例えば、「颯太(そうた)さん」の名前の表記が、「SOTA」と「SOUTA」のような”小さな”違いだったとしても、別人として解釈されるリスクがあります。
3. 信頼性の低下
1文字の小さなミスでも、ミスが見つかった段階で、「この翻訳全体が正確なのか?」と疑問を抱かせてしまいます。
公的機関に提出する書類は、信頼性が何よりも重要であり、誤字脱字はその信頼性を大きく損ねる可能性があります。
誤字脱字が引き起こす具体的な問題
名前や日付のミス
- 名前や日付に誤りがあると、他の書類と整合性が取れなくなり、「本人確認ができない」と判断される場合があります。
- 特に一番重要なのが名前の表記で、名前のローマ字表記がパスポートと1文字違うだけでも、全く別人として扱われるリスクがあります。
- パスポートを作る際、日本人の名前のローマ字は基本的にはヘボン式を対応させますが、ヘボン式でないローマ字表記で申請する方もいらっしゃいます。
- 例: 左はヘボン式、右は非ヘボン式
- 理沙(りさ)さん:RISA、 LISA
- 翔(しょう)さん:SHO、 SYO
- 心愛(ここあ)さん:KOKOA、COCOA
- 例: 左はヘボン式、右は非ヘボン式
これらの違いは日本語話者にはさほど大きな問題に感じられないかもしれません。
日本語話者からすると、ヘボン式か非ヘボン式かで、発音に大きな違いが無いため「SHOさん、SYOさんはどちらも、しょうさん」と脳内で互換できると思いますが、外国語話者からすると、「文字が似ているだけの別人では?」と思われる可能性があります。
翻訳文書全てに言えることですが、「翻訳されたものを読む人の目線になって翻訳する」ということが肝要です。「日本ではこうなのだ」ではなく、「誰が見ても一目瞭然」ということを目指して翻訳をしていくための一歩として「パスポートの名前表記と、翻訳文書の名前表記は必ず一致させる」ということを徹底することが大切です。
手続きの遅延や追加コスト
申請が却下された場合、再申請に伴う時間や費用が発生するだけでなく、場合によっては重要な期限に間に合わないリスクもあります。
誤字脱字を防ぐための具体的な対策
1. プロに依頼する
公的書類の翻訳は、専門知識を持つ翻訳者に依頼することが最善です。翻訳者は言語スキルだけでなく、チェック能力という「目」の能力が必要になります。
2. ダブルチェックを徹底する
翻訳を完成させた後は、必ずダブルチェックをします。
弊所では、プリントした翻訳文のコピーに1文字ずつ斜線をつけて、文字通り「ひと文字ずつ」チェックをしています。絶対に間違えてはならないお名前・生年月日・パスポート番号等の箇所は、かつて間違えたことはございません。
3. 提出先のルールを確認する
提出先の公的機関が求める翻訳のフォーマットや記載ルールを事前に確認し、それに沿った翻訳を準備することが重要です。国や機関ごとに求められる基準が異なる場合があるため、事前の確認が手続きの円滑化に繋がります。
まとめ:正確な翻訳が信頼を築く
公的書類の翻訳では、誤字脱字をなくし正確性を徹底することが不可欠です。「パスポートの表記と一致させる」「提出先の要件を満たす」などの基本的なポイントを押さえることで、スムーズに申請手続きを進めることができます。
信頼できる翻訳書類を準備し、海外での手続きを安心して進められるようにしましょう。正確な翻訳は、あなたの海外での信頼を築く第一歩となります。
ご自身での翻訳に不安がある場合、誤字脱字チェックがご面倒な場合は、是非弊所までご相談ください。戸籍謄本はデータ納品4,950円~翻訳させていただきます。
ご依頼方法は、翻訳したい書類のPDFデータをメールで送るだけでとっても簡単。スマホで撮った写真でもOKです。
参考文献
- 兵庫県旅券事務所ウェブサイト:パスポートのローマ字つづり(ヘボン式ローマ字表記)
https://www.hyogo-passport.jp/main/hebon.html - HISウェブサイト:パスポート記載の名前/性別/生年月日を間違えました。変更できますか?(海外)
https://faq.his-j.com/faqs/65d6ff4f1e992913e147484a/ - 神奈川県パスポートセンター:ヘボン式ローマ字
https://www.pref.kanagawa.jp/osirase/02/2315/passport/hepburn.html