未成年には特別代理人が必要
病気でもう長くない。息子はまだ10歳……。
私には親も兄弟姉妹もいないので、相続人は妻と息子だけ。
遺言書が無くても妻が代理人になれば財産の全部は妻が管理すればよいかな。
実は、それが難しいのです。
相続人に未成年者がいる場合、まずは家庭裁判所に特別代理人の選任申立てをして、親以外の代理人を立てなければなりません。
えっ。自分の子どものことなのに、代理人になれないの?
そうなのです。
「利益相反行為」と呼びますが、父または母が、子ども(未成年)との間で「一方の利益が増えて、一方の利益が減る」といった行為をすることはできないのです。
今回のような場合は、父が死亡し、相続人である母(相談者)と未成年の子どもで遺産分割をおこないますが、仮に母の相続分が増えると子どもの分が減ることになるので、利益相反行為にあたります。そのようなときは、特別代理人の選任を家庭裁判所に請求し、遺産分割しても子どもの利益が保護されることが必要になります。
妻が得するのではなくて、子どもに得な遺産相続をさせる場合でもダメなのかな?
はい。親がすべての遺産を子どもに相続する約束をする場合であっても、特別代理人が必要です。これは、親の行動が外形上、子どもに不利益を与える可能性があるかどうかを見るためです。親の意図や実際の結果が子どものためだとしても、もし行動が外形上子どもの利益を害するように見えたら、それは問題があるとされます。
どのような場合でも、特別代理人を選任する必要があるってことか。
特別代理人は具体的にどんな人がなるのかな。
通常、特別代理人になるために特別な資格は必要なく、たいていの場合、子供と特別な関係がない親戚(おじやおばなど)が選ばれます。
特別代理人になる人が思い当たらないし、仮にいたとしても引き受けてくれるか不安だな……。
いきなり特別代理人と言われても、困ってしまいますよね。
未成年の子がいる方は、遺言書を書くことをおすすめします。
遺言書があれば特別代理人を立てる必要はありません。
遺言書に、子どもにどの財産をどのくらい相続させるかを記してあれば、特別代理人を立てることなく速やかに遺産を引き継がせることができます。
遺言書があれば、相続時に家族が慌てなくて済むのか。
遺言書って難しそうだけれど、未来の家族の安心のために、書いた方がよいね。
遺言書は、人生の最後に家族への感謝の想いを告げることができる贈り物です。ご自身が亡くなったあとのことを考えると胸が痛むかもしれませんが、実際に書いてみると、スッと不安がなくなる人もいます。また、遺言書には付言といって、残された家族への想いを自由に書くことができるメッセージ欄をつけることもできます。どのように遺言書を書くか迷った際は、是非、行政書士に相談してみることをおすすめいたします。